Eタンデム

文学部/文学研究科タンデム学習プロジェクトからの情報です。
————————————————————————–
【Eタンデム】
留学生と一般学生のための文学部/文学研究科タンデム学習プロジェクト
〜ことばと文化を学びあおう〜

タンデム学習(Tandem Learning)とは、あなたが学んでいる外国語の上手なパートナーとペアになり、お互いの言語や文化を学び合うという方法です。
※今学期は、対面式ではなく、インターネットを活用したEタンデムを実施します。

申し込み締切 *10月11日(日)*
対象は大阪大学の構成員(学生、研究員等)の方です。

問い合わせ:
タンデム学習プロジェクト・チーム
tandem@let.osaka-u.ac.jp

大阪大学タンデム学習プロジェクトFacebookページ
https://www.facebook.com/OsakaUTandem
Twitter アカウント @u_tandem
Instagram アカウント osaka_u_tandem

日本語で話そう!

大阪大学の学生・教職員で、日本語を学んでいる人向けのイベントです。

留学を通して考える3-言語習得以外における成長-

留学を通して考える1・2を通して、私が留学中にどのような学びを経験してきたのか、教室内外での学びに分けて考えてきた。今回のコラムでは、留学中の言語習得以外において、私自身がどう変化し成長してきたのかについて紹介する。
私が留学を通して、最も成長したと実感する点は、物事に対してより積極的に取り組み、自分の意見を述べることができるようになったことである。留学中、私は何人かの先生から、日本から来た学生はやや内向的な学生が多く、あまり自身の意見を発言しないと聞いたことがある。たしかに欧米の学生と比べると、日本からの学生は静かな方に属するのだろうかと疑問に思ったこともある。ただ、私はこの言葉があまり好きではなかった。授業を真面目に聞いていても、発言をしないことで意見がない学生と見られていると感じたためである。その頃からか、私は授業中に頷くことより、自身の言葉で発言しようと努力するようになった。発言した内容に語彙や文法の間違いがあったかもしれないが、自分の言葉で自分の意見を伝えることに意味があると感じた。
これは、主に教室内で感じたことではあるが、教室外でも例外ではなかった。中国人ルームメイトともめ事が起こった時も、私はきちんと自分の言葉で自分の気持ちを伝えようとし、気まずさから逃げようとはしなかった。2人1室の共同生活とはいえ、共有スペースを除けば、各々の部屋があることから、必要最低限の関わりで生活することも可能だったからだ。しかし、私は一生に一度きりであろう留学先でのルームメイトとは良好な関係を築きたいと思った。そのため、共同生活をする上で改善された方が良い思うことは相談し、一緒に考えていく姿勢をとっていた。留学を終え、5年が経った現在も、当時のルームメイトとは連絡を取っており、留学中の思い出話をする仲である。
 この他に留学を通して成長した点は、時間を有効に使いながら、挑戦してみたいと思うことは全て行動に移していたことである。留学中は、自分が受講していた授業の他に、北京大学の学部生の授業を聴講したこともある。単位とは関係ないが、学部生の授業も聞いてみたいと思い、挑戦してみたのである。内容理解に追いつけず、途中で諦めてしまったが、今思い返しても良い挑戦だったと感じている。また、長期休暇に入れば、飛行機、バス、高鉄(日本でいう新幹線)などに乗り少し遠くまで旅に出かけた。旅先では、それまで知らなかった中国の新しい一面を見ることができ、新しいものに出会う度に私はワクワクしていた。言語の面においても、中国はとても広く、北京から一歩外へ出ると、今まで聞いたことのない中国語を耳にすることがよくあった。私が旅した中でも、貴州省で話される方言は、全く理解することができなかったことを覚えている。書き言葉は同じなのだが、発音の仕方が異なり、これは本当に中国語なのかとびっくりした。
留学という限られた時間の中で、どれほどのことを学び吸収するかは、全部自分自身に委ねられていることに何度か気づいたことがある。時間をどのように使い、学びにつなげていくのかは留学中の最も大きな課題であるかもしれない。留学を通して、私は言語の学びとともに、私自身が大きく成長することができた。自分の意見をきちんと発言することや、相手と良好な関係を築くこと、また時間を有効的に活用することも学んだ。留学を終え、現在は中国語のインプット、アウトプットともに減少した。現地で身に付けた中国語を忘れないように、今後は言語能力の維持と向上を目標に中国語の勉強を続けていきたい。

(太田真実)

留学を通して考える2-教室外での学び-

前回のコラムでは、教室内における学びを紹介した。今回のコラムでは、教室外における学びについて紹介する。
留学を通して、私の中国語が伸びた、あるいはその成長を実感したのは教室外がほとんどであった。私は2人1室の寮で生活しており、一緒に寮生活をしていた中国人ルームメイトをはじめ、クラスメイト、寮の舎監、タクシーの運転手などとの会話を通してよりリアルな中国語を身に付けようと努力した。わざわざ話すような場面でなくても、何かを言うことに意味を見出し、かれらとコミュニケーションを取ろうとした。何もしなくても中国語のインプットが多いことから、どれほどアウトプットができるかに重点を置いていたのかもしれない。中国人ルームメイトは、最も身近にいる中国語母語話者であり、私は彼女に私の中国語に間違いがあれば随時教えてほしいと言っていた。映画を見に行ったり、料理を作ったり、カラオケに行ったりととても充実していた。映画を見終わったら、内容や感想を言い合うこと、料理の作り方を説明しながら味について述べ合うこと、教えてもらった中国語の歌を歌ってみることなど、とても些細なことのようだが、このような積み重ねが中国語の成長につながったと考える。
また、中国人ルームメイトの他に、私には2人のランゲージパートナーがいた。かれらは日本語や日本の文化に興味があり、私たちは互いの母語や文化について教え合った。カフェでのお喋りや、博物館、美術館などに出かけ、自然な中国語を身に付けたといえる。かれらとの交流を通して、中国の食文化やコミュニケーションの在り方についても自然と学ぶことができた。ルームメイトと異なり、ランゲージパートナーは日本語が話せたことから、理解ができない時は、日本語での説明をお願いすることもあった。
この他に、教室外での学びとして私が実践していたことは、今後使えそうだと思った表現を携帯にメモしていたことである。中国語母語話者との会話や、ドラマの中で使われている表現で、今後使ってみたいと思う表現は、どのようなシチュエーションだったのかも補足で書き添えながら、メモを取っていた。また、毎日実践することはできなかったが、楽しいことがあった日や、旅行に出かけた日は中国語で日記を付けていた。その日感じたことを自分の字で書き記しておくことは、何気ない毎日を過ごす上で非常に重要であり、現在もその日記を通して過去を振り返ることができる。
 中国人ルームメイトやランゲージパートナーの支えがあったとはいえ、中国での生活が全て順調で、言語に関する困難がなかった訳ではない。かれらは私が日本から来た留学生であることを知っている。しかし、寮の外へ出ると、周りの人々は私がどこから来たかは外見上では判断できない。タクシーの運転手と会話することがよくあったのだが、私はかれらが話す中国語が理解できないこともあった。かれらが話す中国語はリスニング教材で流れるような分かりやすい発音ではなく、とても早く、方言が混じっていることもあったからだ。そのような時は、「もう一度ゆっくり言ってもらえますか?」といい、理解しようと努力した。ただ、独り言のように政治や経済のことを話す運転手も少なくなく、全てを理解することは諦めて、うんうんと聞いていたこともある。「分からない」ことを全て知ろうとすることは難しいが、だからといい、耳を閉ざすのではなく、「分からない」ことを客観視しながら、言語能力向上のために何ができるのかを探していく必要があると感じた。                   
 留学先でのあらゆる活動が言語習得と密接に関係していたといえる。スーパーで食材を買う時、宅配ピザを受け取る時、寮の部屋の電気が切れて事務局に問い合わせる時など、すべての活動が中国語習得につながっていた。これらの活動は、言語習得という面以外でも、私を大きく成長させたといえる。次回のコラムでは、留学を通して私自身にどのような変化・成長があったのか、言語以外の面から考えてみることにする。

留学を通して考える1-教室内での学び-

大学2年生の秋から3年生の夏にかけて、学部のプログラムの一環により、中国の北京大学に留学した。留学そのものに対して大きな期待を膨らませており、不安は一切なかった。今まで学んできた中国語がどれほど通じるのか、早く試してみたい気持ちでいっぱいだったからだ(これまでの中国語学習についてはこちら)。中国での言語学習を振り返ると、大きく2つに分けることができる。一つは、教室内での学びであり、もう一つは教室外での学びである。日本での環境と異なり、インプットされる言語が全て中国語だったため、全ての活動が言語習得につながったといえる。今回のコラムでは、一つ目の教室内の学びについて主に授業内容と言語能力評価について紹介することにする。
私が留学した北京大学には、「对外汉语学院(対外漢語学院)」と呼ばれる留学生のためのコースが設けられている。全世界から中国語を学びたいと思う学生が集まり、授業はレベル別に実施される。そこでは、読解や会話(リスニング)などの必須科目と選択科目を選ぶ必要があった。必須科目であった会話の授業では、主にディスカッションやディベートが行われ、その他パワーポイントを使いながら口頭発表をする機会もあった。また、映画やドラマのセリフを暗記し、2人ペアで演技をするという課題も与えられた。会話の授業は、日常的な語彙を身に付け、実践に移すことを手助けしてくれる場であったと考える。アウトプットが非常に多く、新出単語が徐々に自分の単語になるのを感じることのできた授業であった。
選択科目の中で私が最も印象に残っているのは、「古代汉语(古代漢語)」の授業である。中学・高校の頃に漢文の授業を受けていたことから、馴染みのある授業だといえるが、漢字の読み方や意味に多々躓いた。また、時代背景を理解していないと、漢文の内容も理解できないことが多く、この授業は私が受講した授業の中で最も難易度が高かったといえる。予習に時間をかけたり、2人1室で一緒に寮生活をしていた中国人ルームメイトにどういう意味か聞いたりしながら、やっとのことで授業内容についていくことができた。                                                                                                 
 留学前の私の中国語は、簡単な聞き取りができて、やりとりができる程度だった。作文の授業で中国語を書くこともあったが、それらはごく簡単なものに過ぎなかった(CEFRのB1レベル )。留学を経て、私の中国語は、「聞く・読む・話す・書く」の4技能とも上達した。その中で最も成長したのは話すことであり、その次は書くことだと感じている。話すことにおいては、簡単な会話以外にも、出来事や本の内容なども説明できるようになった。また、パワーポイントを使いながら人前で発表するプレゼン力も身についた。書くことにおいては、私が使える語彙力が増えたことから、単文ではなく複文で、文と文の繋ぎもよりスムーズに書けるようになったと思う(CEFRのC1レベル )。
日本で中国語を学んでいた頃は、会話の授業を除き、基本的には日本語で説明が行われていた。しかし、留学中は、どの授業も全て中国語で進行され、新しい学習内容を中国語できちんと理解する力も身についたと感じる。これまで、教室内での学びを授業内容と言語能力評価を中心に述べてきたが、留学は教室外での学びも非常に重要であり、次回のコラムでは、教室外での学びについて詳しく述べることにする。

参考資料
CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)

(太田真実)