我和阪大Tandem的故事 1: tandem学习的介绍

我和阪大Tandem的故事

 这学期我开始在大阪大学进行tandem活动。 tandem是指两个母语不同的人互相学习对方语言的一种学习形式。 我曾在我研究领域的文献中看到过tandem学习,参加会议时也偶然听过相关介绍,所以对它抱有强烈的好奇心。当我得知大阪大学也开展tandem项目时,出于好奇心我竟产生了想试试的冲动。综上所述,理解“什么是tandem,从tandem中能学到什么”就成了我参加阪大tandem项目的动机。
 《我和阪大tandem的故事》分为3个专栏。 专栏1是关于tandem的介绍,专栏2则详细介绍了我在阪大进行tandem学习的经历,专栏3总结了活动结束后的我的反思。希望这篇文章能通过我这个tandem参与者的视角,对想学习及了解异语言和文化的人有所帮助。

【专栏1:tandem学习的介绍】
1 什么是tandem学习
 Wakisaka等(2020)认为,tandem学习是指两个使用不同母语的学习者结成对子,在互惠性和学习者自主性这两个原则的基础上,学习对方的语言和文化的一种学习形式。互惠性是指,学习者双方共同合作,互相学习,而不是某一方掌握主导权;学习者自主性是指学习者双方设计和管理自己的学习,而不是由别人控制自己的学习。想具体了解的同学可以在Little和Brammerts以及Wakisaka老师的网站上阅读到更多关于tandem学习的内容。
 在日本组织和开展tandem学习的大学有大阪大学、九州大学等。这两所学校分别于2012年和2018年导入了tandem学习项目。这里的介绍主要参照在九州大学开展tandem的脇坂老师的网站(http://www.isc.kyushuu.ac.jp/center/tandem/index.html),如果你对这个tandem学习感兴趣,不妨点击链接进去看看。
 脇坂老师的网站就tandem学习的优势做出了如下总结:它能够提高第二语言能力,培养学习者的自主性,提高跨文化交流能力,提高学习语言的积极性。另外与日语学习相关的tandem学习的研究和报告也指出,tandem学习可以建立友谊和说目标语言的信心。
 这次我参加的是大阪大学大学院文学研究科的tandem学习项目。 由于受新型冠状病毒的影响,今年包括介绍和指导在内的所有tandem学习,都在网上进行。 大阪大学的 “tandem学习项目 “目前在Facebook、Twitter、Instagram上也有账号。 如果你感兴趣,可以试着关注看看。
Facebook:大阪大学タンデム学習プロジェクト @Osaka U Tandem
https://ja-jp.facebook.com/OsakaUTandem
Instagram: osaka_u_tandem:https://www.instagram.com/osaka_u_tandem/
Twittter: Osaka U Tandem @u_tandem https://twitter.com/u_tandem

2 tandem学习是如何进行的
 tandem学习中,既没有课程大纲,也没有教师干预。 两个素未谋面、说着不同母语的人如何保持沟通和交流,将学习持续下去呢,带着这样的疑问我参加了在线上进行的tandem项目介绍。借着参加项目介绍会的机会,我开始深度思考“为什么我要参加tandem项目,学习这门语言?”“我要学到什么程度,我要怎么学”等问题。因为在参加介绍会时,参加者双方会被要求填写一张表格,在表格上我们必须写出:(1)通过tandem学习培养的技能(2)预计使用的学习材料(资源),(3)进行tandem学习的频率,(4)各自的学习目标,(5)第1次活动的时间。 在线介绍会当天,我和我的tandem伙伴一边听着项目人员的讲解,一边就自己的目标、喜欢的学习方法、想要使用的学习材料进行了交流。
 除此之外,通过指导,我学会了如何高效利用分配的时间。 tandem的工作人员给我们介绍了一个90分钟的活动建议:一开始留出5-10分钟的回顾时间——然后互相教授对方喜欢的语言,每人30分钟——最后5~10分钟一起制定今后的学习计划。
通过介绍会,我确定了自己想学的语言,也知道了学习目标语言的步骤。那之后的一周,我真正开始了我的tandem学习,我将在专栏2中详细记录我进行tandem学习的经验。
(陳静怡)

阪大でタンデム学習をやってみた 3: タンデム学習を経験した私の心得

1 経験の振り返り:タンデム学習を成り立たせるためには何が必要なのか?
 コラム2では、阪大でタンデム学習を行った私の経験談をまとめました。このコラムでは私の内省に基づき、タンデム学習を成り立たせるためには何が必要なのか、タンデム学習の魅力は何なのかについて書きます。実際にパートナーと会って、活動したのは短い6回でしたが、この3ヶ月で私は全く知らなかったロシア語を少し読めるようになり、ロシアの文学を楽しむ趣味を持つようになりました。また、一緒にご飯を食べたり悩みを相談したりできる友達を見つけました。高いレベルのロシア語力を獲得したわけではありませんが、タンデム学習を通して、「論文の英語の要旨を書く」、「ロシア語の詩を読む」という当初の2つの目標を遥かに超えている収穫があったと感じたため、私にとっては成功した有意義な学習だと思います。この節では、この3ヶ月弱の経験を振り返り、タンデム学習を成り立たせるためには何が必要なのかについてまとめます。
最も重要だと感じたことは、自分の学習に対して責任を担うことです。どの学習にも当てはまり、フンワリとした言葉かもしれませんが、今回のタンデム学習を経験した後、「学習に責任を持つこと」は、自分で目標を設定すること、リソースの準備をすること、活動時間外の独習の時間を保障することを含むと感じています。私とパートナーはフォーマル教育における教師と学生の関係性や、雇われた家庭教師と学生の関係性ではなく、あくまでも同じ興味関心である活動に関わる参加者同士の関係性であるため、お互いの言語学習のカリキュラムやシラバスをデザインし、学期末までの到達度を決める義務はなく、誰もそのようなリクエストは出しません。このような自由な枠組みの中で、学習をデザインできるのは自分自身しかないとしみじみと感じていました。自分の学習するリソースの準備ができていない、あるいは学習期間に似合う目標と計画を自分で決めないと、初対面の相手と話す話題がなく、相槌をうつ程度のコミュニケーションで学習が締めくくられる可能性が高いと最初の2回の活動を振返りながら気づきました。目標設定を変更した3回目の活動から、私は毎回リソースを前もって準備し、活動に参加する前自分で情報検索しながらコンテンツを学習し、確認したい箇所、議論したい質問を準備するようにしました。そうなると、タンデム学習でパートナーと会う時間は自分の気づかなかったミスを気づかせてくれる貴重な機会となり、一緒にアイデアをシェア・議論する異文化コミュニケーションの場にもなりました。活動時間外の独習の時間を保障した上で、タンデムの会に臨むこと、これは3回目以降のミーティングがうまく行った最大の理由だと思います。
 相手の国の文化に興味関心を持つこともタンデムを成り立たせる重要なポイントだと思います。タンデムミーティングを行う際、パートナーはいつも中国の文化に興味を示しており、最近見た中国のニュースや自分の知っている中国の情報について質問してきて、私にメディアとは違う本当の中国について聞いていました。私がロシアの文学興味を持った時、ロシア語の詩を調べ自分の解釈を述べた時も、パートナーは喜んでくれました。このように、共通した話題から、議論や雑談の話題が徐々に広げていき、パートナーと言語学習以外にも意見交換できる話題が生まれ、徐々にいろいろな出来事に関する考え方や世界観をシェアできるようになり、2人の間で言語学習のパートナーを超えた友情的なものが芽生えたと思います。
 最後に、限定的なことかもしれませんが、今回の私の経験からお互いの属性が似ていることもタンデム学習の一助になったような気がしています。阪大のタンデムプロジェクトのスタッフが気を遣ってくれて、在日留学生、博士後期課程の院生の方をパートナーとして紹介してくれました。この2つの属性を共有していることで、私とパートナーの間でコミュニケーションがうまくいったと感じた部分が多かったです。同じ在日留学生であるため、日本で経験したカルチャーショック、異文化適応について話し合うことができました。また博士後期課程の院生同士だからこそ、学術的な英語の書き方について話し合えたし、中国語学習に関する論文を一緒に読むことができました。そのほかに、博士後期課程の学生の不安や悩みついてお互い相談し合い、慰めることもありました。このため、私にとって、パートナーにはロシア語、ロシアの文学に関する好奇心を持たせた人ではなく、異国の日本で学業を修める不安を分かち合える存在でもありました。
 以上の3点が後タンデム学習を始める皆さんの参考になれば幸いです。

2 私が感じたタンデム学習の魅力
 週ごとのタンデム学習のミーティングが終わった後、私はワクワクし、心から湧いてくる喜びを感じることが多かったです。このような気持ちは教室内における言語学習で感じたことがなく、これこそタンデム学習の魅力だと思います。この節では私が意識したタンデム学習の4つの魅力について述べます。
 最も私を魅了したところは予想外の学びを通して世界が開くことでした。最初に目標を持っていなかった段階から、すぐ到達できるような小さすぎる目標を作った段階、そして、最後の本当に心から達成したい目標を立てそれに向けて頑張っていた段階までのプロセスは、私とパートナーの2人にとっては予想外でした。また、対象言語を学習するのに、パートナーとは英語でやりとりしているため、活動が始まった最初の段階より、自分の英語が大分スムーズになったことも感じました。新しく目標を持てたことや新しい言語を学習できたことなど、私にとってタンデム学習は人間同士のコミュニケーションから、新たな学びが収穫できる学習形式です。
 タンデム学習において、私は常に複数の言語体験をしています。このことからも魅力を感じています。ロシア語と中国語の学習が主要な活動ですが、英語で話したり、日本語をついでに学んだりすることが多く、また、複数の言語圏の文化を比較することもありました。私は文法的に正しく、母語話者レベルの英語やロシア語、日本語を話せるわけではありませんが、辞書をひいたり、ジェスチャーなど非言語行動を混ぜたりしながら、2人のコミュニケーションは円滑に達成できました。パートナーは時々私の変わったロシア語や英語を指摘してくれますが、それよりも話す内容に重きを置いていました。このような学びの形式は私が高校や大学で経験した「適切さ」重視の言語教育とは異なっていました。タンデム学習なら適切さを重視するか、そうではないかを相手と話し合って決められるため、私たちは正しさよりも、言いたいことをたっぷり話すことに重きを置くことで、複数の文化体験ができたと思います。
 最後に、タンデム学習で私がいつも満足感が得られたのは、自分の進歩や変化に気づいたことからだと思います。タンデム学習を続けるためには、自分で学習をデザインすることが要求されます。次段階の学習を進めるためには、常に前段階で学習した内容を復習したり、自分の学びを振り返ったりする必要が生じます。そうすることは、実は自分を観察することであり、自分を評価することにつながります。このため、タンデム学習を行っているときは、私は学校で言語を学ぶ時よりも、常に自分の気持ちや自分の語学力のレベルに敏感でした。
 この記事を書く前の日に、私はパートナーと7回目の活動を行いました。阪大のタンデムプロジェクトの枠組み外の初めてのミーティングですが、普段よりもリラックスして学び合うことができ、2人ともタンデム学習から生まれるこの奇妙な友情を不思議に思っていました。理解してくれる友たちができたこと、これも私が感じたタンデム学習の魅力です。

【タンデムで使ったオンラインリソース】

・中国語発音・語彙学習のアプリの「Chinese Skill」
中国語のピンイン(アルファベット)を学習する際に使用しました。子音、母音一つ一つ確認できるところはありがたいです。音節に声調が加えた後の読み方や子音と母音の組み合わせの全体像はないですが、ピンイン入門の第一歩としては非常に分かりやすいと感じました。

・中国語会話学習のアプリの「Learn Chinese-M Mandarin」
基礎的な中国語会話を学習する際に使っていました。実際に中国で生活する際に出会えるティピカルな場面を動画、コミックで一個一個取り上げてくれています。コミックに載せているセリフをタッチすると、英語がついた文法の解説も出てきます。中国の風景が実際に見えること、動画で面白く学習できることの2点からお勧めです。

・英語表現をチェックしてくれるアプリの「Grammarly」
英語の文章の文法校正に使っていました。文法やスペルの間違いの指摘に加え、なぜ間違っているのか、より適切な表現はなんなのかの提案もしてくれます。文章だけではなく、英語のプレゼンテーションやメールの校正など、幅広く活用できると思います。

(陳静怡)

阪大でタンデム学習をやってみた 2: タンデム学習をやってみた

1 タンデム学習をやってみた

 コラム1では、タンデム学習について紹介しました。今回のコラムでは、実際にタンデム学習を行った私の経験談をまとめています。コロナの影響で今学期のタンデム学习の期間は普段より短くなり、パートナーと2人のスケジュールを確認した結果、合計6月から8月の間に合計6回活動することにしました。

最初に定めた目標としては、私は現在執筆中の論文の英語の要旨を作成し、アカデミックな英語表現を学ぶことであり、パートナーは中国語、特に日常会話の中国語を学ぶことでした。しかし、実際にこの目標に向けて進めている際に、問題点が生じ、途中で目標と計画を変えることがありました。現在、振り返って見ると、最初の2回はうまくいかなかったと感じており、お互いの学び、自らの学習のデザインが徐々にできるようになってきたのは「方向転換」をした3回目以降の活動からでした。

以下はまず2試行錯誤の段階の部分では、2.1で1回目と2回目の活動内容を簡潔にまとめ、2.2でなぜ最初の2回のタンデムがうまく行かなかったのかについて記したいと思います。次に3の本気が出た段階の部分では3.1における3回目以降の活動の内容の回ごとの概観を踏まえ、3.2で私の経験を基にタンデム学習を成り立たせるためには何が必要なのか、3.3で私が実際に感じたタンデム学習の魅力について述べます

 

2 試行錯誤の段階

2.1 1回目と2回目の活動内容

 1回目のミーティングは学校の近くの学生がよく自習するやや混雑した喫茶店で行いました。私は前もってダウンロードした中国語学習のアプリを利用し、中国語の発音の基礎を英語でパートナーに説明し、発音のドリルを一緒にしました。残りの45分は私のアカデミック英語の時間のはずですが、誰もリソースを準備して来なかったため、雑談の話題を一生懸命探して、無理やりにコミュニケーションを続けていました。

2回目のミーティングの場所をやや人の少ないカジュアルなカフェにしました。中国語のセッションで、私は前回中国語を教えた際のパートナーからのフィードバックに基づき、新たな教材を加えました。「Learn Chinese-M Mandarin」というアプリを使い、発音と共に、日常会話、自己紹介について一緒に学びました。英語のセッションで、私はパートナーが事前に送ってくれた本を参考に作成した英語要旨を見せ、2人で要旨の構成や英語表現について一緒に確認していました。また、相手は「Grammarly」という英語表現を自動的にチェックしてくれるアプリを紹介してくれました。問題となったのは、この回で当初私が立てた要旨作成の目標はすでに達成したことになり、これからのタンデム学習でどんな活動をしたらいいのか分からないことでした。

2.2 最初の2回のタンデムがなぜうまくいかなかったのか

前2回の会では何について学ぶべきなのかが分からない部分があり、互恵性、学習者オートノミーが発揮されたとは言い難いと思います。なぜ最初の2回はうまく進めなかったのかについて考えた結果、以下の2点に気づきました。

まずは自分が学ぶリソースの準備ができていなかったことです。自分が学ぶことの準備について、ガイダンスで自ら準備することを勧められたにも関わらず、相手が準備をしてくれるものと勘違いして、私自身は何も準備もしていませんでした。学習リソースの準備ができていなかったことに加え、その日のミーティングはざわついた環境で行われたため、お互いの声をはっきり聞くことさえ難しかったです。何について学ぶべきかが分からず、かつ周りの雑談の雰囲気にも影響され、ミーティングは無理やり雑談で乗り切ることしかできませんでした。次に、目標設定の問題点も存在していたと思います。初期段階で私がすぐ到達できる目標を設定してしまったため、目標達成後の次段階の計画と学習内容の設定が間に合いませんでした。

2回目のミーティングから私とパートナーはお互いが自分の学習するリソースを準備するようになり、3回目から目標を立て直しました。それによって、やっと本当の意味でのタンデム学習が始められたと感じました。

 

3 本気が出た段階

3.1 3〜6回目の活動内容

<目標を立て直した3回目の活動>

 3回目のミーティングまでに、私は目標を立て直しました。前回のミーティングでのパートナーの「ロシア文学、とくに詩は感性に溢れており、マヤコフスキーの詩を読みながら涙が出たこともあった」との話をきっかけに、私は実際にインターネット上で中国語に翻訳されたロシアの詩を読みました。久しぶりに読むと、不思議と北国の自然の美しさ、自然に関するメタファーに隠された詩人の繊細な気持ちが伝わってきました。それでYoutubeでロシアの詩の朗読動画を数多く閲覧したところ、自分も詩を読めるようになりたいという思いが芽生えたので、この目標をSNSでタンデムのパートナーに伝えました。目標を立て直したことで、次回からは「私の詩を朗読するためのロシア語学習」とパートナーの「基礎コミュニケーションのための中国語学習」を進めることになりました。目標を決めた週の私の動機付けはかなり高くなりました。Youtube上の動画とも比較しながら、自分にとって最も分かりやすい説明、最も覚えやすい順番を立て、ロシア語音声学習のノートを作りました。ミーティングでパートナーが発音の誤りが指摘できるように、事前にアルファベットの音と書き方を覚えました。

今回のミーティングから、パートナーは中国語で簡単な挨拶で話しかけてくれるようになり、それをきっかけに私もロシア語の挨拶を聞き、覚えていきました。また、ミーティングを始める前に、一緒にご飯を食べたりするようになり、夏休みになったらお互い友達を誘って遊びにいく約束をしました。

この週の回でパートナーはアルファベットの書き方、発音をチェックしてくれました。調音法や使用した調音器官の微妙な違いはオンライン上のリソースを活用するだけでは弁別できないものがあり、対面で教えた方が発音の特徴がつかみやすいやすいような気がしました。と言いながらも、呼気で舌を振動させながら発音する巻き舌のふるえ音の[r]はパートナーが何回も手本を見せてくれても、うまくいきませんでした。それを飛ばして、その後、アルファベットから単語を綴る練習、基本なフレーズの練習を2人で行い、ロシア語学習のセッションを終了しました。中国語学習について、パートナーは今週復習と予習をする時間がなかったため、タンデムの時間では前2回で学習した内容を復習していました。3回目の私のロシア語学習が相手の予想よりもはるかに進んでいるため、来週からは怠けず、中国語を真面目に勉強すると話していました。

図1 タンデムで使ったロシア語学習のノート

 <4言語が飛び交う4回目の活動>

 前回の活動を経て、ロシア語のアルファベットに関する「理論的」な知識は大体把握できたかと思いますが、巻き舌のふるえ音の[r]がなかなか正しく発音できないことと、単語を効率よく綴り発音することはなお難しかったです。今週の会で「『できる自分』を見せないと」との気持ちが強く、4回目の活動に向けて自分で練習していました。[r]の発音については、Youtube上の動画を見ながら練習していました。自分にとってもっとも丁寧で、分かりやすかった動画に従い練習していた3日目、奇跡的に「r」の音が突然できるようになり、あまりにも興奮していたので、その日の夜遅くまで今学期で読めるようになりたいロシア語の詩を探し始めました。ネット上で中国語に翻訳されたロシア語の詩をいろいろ探した結果、Борис Пастернак(ボリス・パステルナーク)の「Единственные дни(唯一の日)」に決めました。タンデムの会での話し合いがスムーズに進むうに、中国語版とロシア語版をノートに書きました。

4回目のタンデムも週末に行いました。前回一緒にご飯を食べた時は関西の観光地やコロナについての世間一般の話題が中心でしたが、今回はこの週の出来事と自分の気持ち、夏休みの計画、おすすめの買い物など自分について語ることが多くなりました。

この週の会は私がボリス・パステルナークの詩を持ってきたことで、ロシア文学に関する話題で盛り上がりました。パートナーは自分の好きな詩―エセーニン(Есенин)の「シャガネ、ああ、私のシャガネ(Шаганэ)」を見せてくれましたが、ロシア語だと私は意味が分からないため、向こうがロシア語の原本、私が中国語版を見て、英語で意見交換していました。その後、英語の翻訳を一緒に見ましたが、2人とも詩の裏には言語では表せない何かがあると共感しました。文学の話題で話が止まらず、今週は言語を学ぶよりも文化について学ことに時間を費やしていました。私が持ってきた詩について意見交換した後に、パートナーは朗読の練習に付き合ってくれました。

中国語のセッションでパートナーと一緒に親族名称、他者を紹介する表現を確認しました。日本での日常コミュニケーションが円滑にできるように、中国語だけではなく、対応する日本語の表現も伝えました。私が中国語、日本語の家族語彙を教える際、パートナーからは、「お姉さんはロシア語で何と言いますか」のロシア語の復習の質問を投げており、気づいたら、ノートには「お姉さん(日)——姐姐(中)——сестра(ロ)——sister(英)」のようなメモがいっぱい残っていました。

タンデム学習は私が全然想定していなかった方向性へ発展していましたが、当初自分が考えていたことより遥かに人をワクワクさせていると感じました。今になっては、次回の活動に対してやや期待する気持ちも生じたかと思います。

 図2 タンデムで詩の読み方を練習した際にとったノート

<褒められることの嬉しさを感じた5回目の活動>

先週の回でパートナーはロシア語の格変化について少し説明してくれましたが、全然理解できなかったため、ミーティング終了後自分で調べました。文法はもともと絶対触りたくないエリアであり、ネット上の動画を閲覧する時もいつも文法の説明を飛ばしていました。しかし、ミーティングでそれについてディスカッションできるといいなあという気持ちで、大学のロシア専攻の教科書の説明動画を見始めました。指示詞と格変化に関するメモをまとめ、理解できなかった部分にマークをつけて、今週のミーティングで聞こうと思いました。ロシアの詩の学習については、パートナーを泣かせたマヤコフスキーの詩「ЛИЛИЧКА!」の中国版と英語版を読み、読むようになりたい「Единственные дни(唯一の日)」の練習を繰り返ししていました。

5回目のタンデムもパートナーと一緒に晩ご飯を食べ、お互いの研究の進捗状況、論文投稿のストレスについて話し、パートナーの来週の旅行の観光ルートに関する情報収集をしました。

この週のタンデムで格変化の理解を深めるために、私はパートナーに具体的な例文を求め、例文を英語で説明してほしいとのリクエストを出しました。パートナーは最初快く応じてくれましたが、説明しているうちに混乱してしまい、自分はロシア語を話しているのに、ロシア語のルールの理解ができていないと述べ、言語を教えることの難しさを感じたようです。パートナーがロシア語のサイト、私が中国語のサイトを探し、また2人で英語のサイトも探したりして、やっとお互い納得のできる説明が得られました。ロシアの詩については、私がマヤコフスキーの詩を持ってきたことで会話が盛り上がりました。詩の中で出てきたメタファーや、マヤコフスキーの詩の独特な読み方についてのディスカッションが長く続き、お店が閉店する時間になっても、話が止まらず、私たちは携帯とiPadを持ち歩きながら、帰り道で残りの部分の確認をしました。踏切で電車の通過を待っているうちに、私はロシア語で「Единственные дни(唯一の日)」の最初の2段落目を読んでみたら、電車が通る大きな音の合間に、パートナーの「本当にわたしをびっくりさせた!1回もつっかえることがなかった、ここまでできるとは思わなかった!本当によくできた!」と言う褒め言葉が聞こえました。蒸し暑い夏の道を歩きながら、なぜかとても感動してしまい、その嬉しい気持ちは一晩中続きました。

ロシア語ができても、ロシアの詩が読めるようになっても、わたしにとっては将来につながるわけではありませんが、なぜここまで夢中になったのかは分かりませんでした。しかし、この短い2ヶ月の中で、タンデム学習とは何か、なぜそれが魅力的なのかの答えが少し分かったような気がします。

 

<終わりではない6回目の活動>

前の回でパートナーに褒められたことで、ロシア語、特にロシア語で詩を読むことに対する自分のモチベーションはこの週、非常に高かったと感じています。今週の会でタンデムの目標を達成し、パートナーに「できる自分」を見せるために、私はすぐさま、「Единственные дни(唯一の日)」の朗読動画をダウンロードし、電車に乗る際、ジョキングする際に聞き、周りに人がいない時に復唱するようにしました。

この頃にはタンデムの時間は当初定めた時間通りに行うのではなく、お互いのスケジュールがタイトなので、SNSで柔軟に調整し、週ごとに決めるようになっていました。6回目のミーティングは休暇のため、1週間後に行いました。

ガイダンスの際は2人で今学期6回活動すると合意したため、今週の回は阪大のタンデムプロジェクトの枠組みの中で行う最終のミーティングとなりました。そのため、中国語のセッションで私は新しい内容を2人で確認するのではなく、これまで学習した語彙、文型、会話の例を活用し、パートナーと簡単な中国のみのコミュニケーションをとろうとしました。2人で、初めて阪大で出会った際の挨拶、自己紹介、趣味や家族について、自分の状況に基づき、例文を改編しながら会話を成り立たせました。最後の中国語セッションでパートナーは自分の感想について話し出しました。最も意外なことは、中国語を学ぶとともに日本語学習もできたこと、複数の言語を比較しながら学習ができたことでした。ロシア語のセッションで私は1人で練習した「Единственные дни(唯一の日)」の詩の朗読をパートナーに見せました。パートナーも喜んでくれて、2人の目標達成の喜びはもちろん、何よりも自分の好きなものに興味を持った人がいたことが嬉しかったようでした。その続きで、パートナーはこの詩をどのように感情豊かに読むのかについて教えてくれて、2人で練習しました。

阪大のタンデムプロジェクトでのミーティングはこの6回で終わりましたが、私とパートナーは今後とも一緒に遊んだり、中国語とロシア語の学習を進めたりする約束をしました。お互いの都合に合わせ時間を調整し、研究と仕事に支障をきたさない前提で中国語会話の会やロシアの詩の会を開くことにしました。6回目の活動が終わった後、パートナーがマヤコフスキーのコレクションに関する情報を送ってくれました。私のロシア語学習はまだまだ終わっていないと感じました。

次のコラム3ではタンデム学習を行った私の振り返りに基づき、タンデム学習を成り立たせるためには何が必要なのか、タンデム学習の魅力は何なのかについて書きます。
(陳静怡)

阪大でタンデム学習をやってみた 1: タンデム学習の紹介

阪大でタンデム学習をやってみた

わたしは今学期から阪大でタンデム学習を始めました。タンデム学習とは母語が異なる2人がお互いの得意な言語について学び合うような学習形態です。自分の研究分野の文献を読んだり、発表を聞いたりする際に、タンデム学習に関するものを見たことがあり、次第に好奇心が生じました。その後、阪大でもタンデム学習のプロジェクトが行われていることを知り、自らの好奇心を満たすために、やりたいという気持ちが生じました。まとめると、「タンデム学習とは何か、そこから何が学べるか」を知ることが私の動機づけです。

このシリーズでは、3つのコラムに分けて書いています。コラム1はタンデム学習の紹介について書いています。コラム2は私が阪大でタンデム学習を行った経験を記述しており、コラム3では活動が終わった後の私の振返りをまとめています。実際にタンデム学習をやってみた私の目を通して、異なる言語や文化について学びたい皆さんの役に立てたら幸いです。

次のコラム1では、タンデム学習とは何か、タンデム学習はどのように進むのかについて、文献と私が受けたガイダンスに基づいて、まとめています。

 

【コラム1:タンデム学習の紹介】

1 タンデム学習とは何か

Wakisaka, et al.(2020)によると、タンデム学習とは異なる母語を話す二人の学習者がペアになり、互恵性と学習者オートノミーという2つの原則に基づき、互いに言語と文化を学び合う学習形態のことです。互恵性とは、誰かがイニシアチブを持つのではなく、双方が協力しお互い学び合うことで学習を成り立たせることを指し、また、学習者オートノミーとは、誰かのコントロールのもとで学習を進めているのではなく、あくまでも参加者双方が自らの学習をデザインし学習の管理を行っていくことだと言われています。タンデム学習自体についてはLittle and Brammerts や脇坂先生のサイトで詳細に紹介されているので、興味を持った方はそちらをご参照ください。

日本の大学でタンデム学習を組織し、運営しているところには例えば阪大や九州大学があり、阪大で2012年に導入され、九州大学でも2018年から導入されました。ここでの紹介の部分は主に九州大学のタンデムに携わっている脇坂先生が作成したサイト(http://www.isc.kyushuu.ac.jp/center/tandem/index.html)と阪大のタンデムのガイドラインを参考にしながら書いています。興味関心のある方はぜひリンクをクリックして見てください。

タンデム学習の利点について、上述した脇坂先生のサイトでは、第二言語能力を高める、学習者オートノミーを伸ばす、異文化コミュニケーション能力を向上させる、言語学習の動機を高める、のようにまとめています。また日本語学習に関連するタンデム学習の研究や報告では、友達意識が芽生えることや目標言語を話すことに対する自信がつくと述べられていました。

今回私が参加したのは大阪大学文学部・文学研究科のタンデム学習プロジェクトです。新型コロナウィルス感染拡大のため、今年はガイダンスを含め、全てがオンライン上で行うEタンデムになりました。阪大のタンデム学習プロジェクトは現在Facebook、Twitter、Instagramともアカウントを持っています。興味関心のある方は、是非フォローしてください。

Facebook:大阪大学タンデム学習プロジェクト @Osaka U Tandem

https://ja-jp.facebook.com/OsakaUTandem

Instagram: osaka_u_tandem:https://www.instagram.com/osaka_u_tandem/

Twittter: Osaka U Tandem @u_tandem https://twitter.com/u_tandem

 

2 タンデム学習はどのように進むのか

タンデム学習にはカリキュラムの枠組みや、教師による仲介がありません。それまでにお互い面識がなく母語も異なる2人がコミュニケーションを取り続け、学習を続けていくためにはどうすればいいかにについて疑問をもったまま、オンラインガイダンスに参加しました。

ガイダンスに参加することは、「私はなぜタンデム学習に参加し、なぜこの言語を学ぶのか」、「どこまで学びたく、どのように学ぶのか」について深く考える機会となりました。その理由は、ガイダンスに参加する際は、「ガンダンスシート」の記入が実際に活動する2人に要求されるからです。そのガイダンスシートには、⑴タンデム学習を通して伸ばしたいスキル、⑵使いたい学習教材(リソース)、⑶タンデム学習を行う頻度、⑷目標、⑸初回のセッションの予定、を書く欄がありました。オンラインガイダンスの日、プロジェクトのスタッフの説明を受けながら、私とタンデムパートナーは自分の目標、自分が望んでいる学習方法、使いたいリソースについて意見交換しました。

また、ガイダンスを通して、決められた時間をどのように効率的に利用するかを知りました。タンデムのスタッフは90分のセッションを組み立てる案を一つアドバイスしてくれました:最初の5~10分は振り返りの時間として設定しておく——その後お互いの得意な言語を30分ずつ教え合う——最後の5〜10分は今後の計画を一緒に立てる。

ガイダンスで自分のやりたいこと、やりたいことをタンデムで実行する手順を知り、その次の週に私は実際にタンデム学習をはじめました。タンデム学習を行った私の経験談はコラム2にまとめています。

 

参考文献

Wakisaka, M. Hayashi, T. Kitagawa, N. Wolanski, B. Harada, K. Zhenyan, C. (2020). The Significance of Tandem Learning in a Japanese University. JASAL Journal. 1(1), 104-128.

(陳静怡)

会話練習パートナー紹介

OUマルチリンガルプラザには、現在日本語2名、英語2名、中国語1名、韓国語1名の、計6名の会話練習パートナーがいます。

 

 

みんなとてもフレンドリーで、みなさんと会話練習するのを楽しみにしています。1セッション20分と、気軽に利用していただける時間を設定しています。対面とZoomでのオンラインどちらでも対応していますので、一度お試しください。
詳しくはをご覧ください。

OUマルチリンガルプラザ「コーパスと言語教育・言語学習」②

1  実際にコーパスを動かしてみる

前回のコラム(「コーパスと言語教育・言語学習①」では、言語教育や言語学習に活用できるツールである「コーパス」について概説しました。今回は、前回のコラムの4節にて紹介した4つのコーパス全てに実際に触れ、いくつかの言語事例について取り上げたりなどもしながら、調べてみたいと思います。

以下では、3つのスライドと動画を使って、各コーパスについての簡単な講義およびどのような使い方をするか、ということについて解説を行いました。ご覧いただくにあたり、前回コラムにて紹介した順番に並べておりますが、ご関心のある動画からご視聴いただければ幸いです。

 

2 British National Corpus (イギリス英語コーパス) についての解説

いくつかの事例を取り上げ、英語コーパスの一つであるBritish National Corpusを使って調べてみました。

 

3 Tatoeba Corpus (パラレル対訳コーパス)・JFELL corpus (学習者コーパス) についての解説

対訳コーパス・学習者コーパスについて、その紹介を行い、使い方などについて解説を行いました。(1本の動画で2つのコーパスを扱っています)

 

4 Kotonoha Corpus (日本語コーパス) についての解説

いくつかの事例を取り上げ、日本語コーパスの一つである少納言コーパスを使って調べてみました。

 

5 おわりに

本コラムを最後までご覧いただき、ありがとうございます。コーパスは、そのデータに振り回されすぎるのも良くありませんが、うまく使えば言語学習・教育・研究に対してとても有用なツールとして貢献してくれます。日々新しいデータは構築されていますし、コーパスは今後も言語の様々なすがたを映し出すものとして進化し続けると予想されます。このページを見てくださっている方は、「ことば」に関する関心が高い方も多いのではないかと思いますが、皆様がほんの僅かでもコーパスそのものやそれを活用した言語学習・言語教育に関心を持っていただけるならば、これ以上ない喜びです。

(福本広光)

OUマルチリンガルプラザは10月12日にOPENします

OUマルチリンガルプラザは10月12日 (月) にOPENします!

開所時間は平日10~17時です。

自習スペースのほか、言語の独習用図書 (阪大で専攻語として学ばれている25言語) の閲覧もしていただけます。

また、日本語・英語・中国語・韓国語の会話練習を実施します ので、興味がある方はぜひいちど利用してみてください。詳しくはこちら。 (ご希望により、対面・オンラインにて実施します。)