【アカデミックライティング】引用の仕方

 こんにちは、日本語チュータリング担当のTFです。

 みなさんは、レポートや論文を書く際、他人が書いたもの(データや資料、他人の主張)と自分で考えて書いた文章を明確に区別し、それが読み手にもわかるように意識していますか?自分の文章の中で資料や他人の主張を提示する行為を「引用」と言いますが、引用の方法を誤ると、たとえそれが意図的でなくても評価されなくなることがあります。なぜなら、論文やレポートは第三者が後から検証できるように記述する必要があるからです。そのため、これから紹介する引用のルールを守り、正しく引用するようにしてください。

1.引用の目的

 引用は、何のために行うのでしょうか。先ほども説明したように、レポートや論文は他者が検証可能な情報を丁寧に積み重ねて書くものです。ですから、まず、レポートや論文で取り上げている情報が信頼できるものであることを読み手に示す必要があります。また、自身の主張を論証する際に、「このようなデータがあるから」「研究者Aがこのように述べているから」といった表現を用いることで、自分の主張の位置づけを明確にし、説得力のある文章を書くことができます。そのため、引用は単独で用いるのではなく、必ず主張とセットで使用することが重要です。

2.引用のポイント

① 引用の出典(どこで、誰によって、公表されたものか)を明示すること。
② どこからどこまでが引用部分であるかが明確にわかるように記述すること。

3.引用の種類

 引用には、データや資料、他人の主張をそのまま紹介する「直接引用」と、それらの内容を要約して示す「間接引用」の2種類があります。

(a) 直接引用
 直接引用には、さらに2種類の方法があります。引用したい部分が短い場合は、引用部分を「」で囲みます。

〈直接引用(短文)の例〉※出典の示し方は専門分野によって異なります。
「日本の伝統文化は、現代社会においても重要な役割を果たしている。」(山田, 2020)
引用部分が長文の場合は、本文と引用箇所の前後に1行のスペースをあけ、引用部分の行頭を2文字分下げて記述します。

〈直接引用(長文)の例〉※出典の示し方は専門分野によって異なります。
 
 どちらの方法を使用する場合も、元の文章を一字一句変更しないように注意してください。もし引用する元の文章に誤字や脱字があった場合は、勝手に修正せず、ルビを使って「原文ママ」と記載するか、注釈で「原文ママ」と触れ、引用元に誤りがあることを明示するようにしてください。

(b)間接引用
 間接引用の場合、「」などを用いて引用部分を示す必要はありませんが、引用する内容を正確に要約することが必須です。

〈引用元〉※出典の書き方は専門によって異なります。
「都市化が進むと、住民の健康や環境への影響が増加する。しかし、これを解決するためには公共政策や市民の意識改革が不可欠である。」(佐藤, 2021)

〈間接引用の例〉※出典の示し方は専門分野によって異なります。
 佐藤(2021)は、都市化が進むことで住民の健康や環境への負担が大きくなると指摘し、その解決には公共政策の改善や市民の意識改革が重要だと述べている。

4.孫引き

 引用する際の注意として、「孫引き(まごびき)」について紹介します。「孫引き」とは、引用された文献をさらに別の文献で引用することを指しますが、これは避けるべきとされています。そのため、ある文献に引用されている内容を、自分の論文やレポートで引用したい場合は、必ずその引用元にあたって直接引用する必要があります。ただし、元の文献や資料が貴重であり、一般的な閲覧が禁止されているなど、入手が困難な場合には、その事情を注釈で説明した上で、例外的に孫引きを行うことがあります。
 最後に、引用した文献の出典を文末の参考文献または引用文献に必ず明記してください。出典の示し方は専門分野によって異なるため、自分の専門の先行研究を参考にして、適切な形式で記載しましょう。自分で書いた論文やレポートの日本語をチェックしてほしい場合は、ぜひOUマルチリンガルプラザの日本語チュータリングをご利用ください。

参考文献

井上貴翔・田代早矢人・寺山千紗都・諸岡卓真実(2024)『大学生のための論文・レポート作成法-アカデミックライティングの基本を学ぶ-:改訂版』学術図書出版社

人文学研究科言語文化学専攻 小坂 凜