コラム1ではDörnyeiたちのモチベーションを自分で調整するためのストラテジーを中心に紹介しました。このコラムでは観点を変え、自分で言語学習の目標、計画を立て、評価を行う場合、このプロセスでのモチベーションをどうのように維持できたらいいのかを青木の研究に基づいて紹介します。
青木(2013)は言語学習アドバイジングの行い方について詳しく書いており、その中ではどのようにモチベーションを維持するかについて詳しく述べています。言語学習アドバイジングとは、学生が自分で外国語学習の目標を立て学習を進めていける力を身につけるのを助ける方法です。アドバイザーと定期的に会い、対話を行うことで、学生はPlan(計画)―Do(実行)―See(振り返る)のサイクルを習慣化していく。大阪大学のOUマルチリンガルプラザでは、言語学習アドバイジングのサービスを提供していますが、詳しく知りたい方は下記のリンクをご参照にしてください(https://plaza.cme.osaka-u.ac.jp/2021/04/09/event_02/)。
実際に阪大でアドバイジングを受けている方は無論、それ以外の方にとって、言語学習のモチベーション維持の方法は役に立つので、ぜひ本節の内容を参考にしていただけたらと思います。これからは青木(2013)で挙げている3つの方法を紹介します。
まずは、言語学習の「目的を思い出す」ことです。方法として、以下のものがあります:
⑴ 思い出す手がかりを身の回りに置くこと:例えば、旅行のために外国語を学習するのなら、行き先の観光ポスターを部屋のどこかに貼り付けることができます。
⑵ 使っているリソースを目立つところに置くこと:例えば、筆者は手書きの単語リストをパソコンのディスプレイあたりに貼り付けています。
⑶ 目的を家族や友だちなど親しい人に話すこと:そうすると、その人と話したりする時に、目的が思い出せるかもしれません。
次は、「記録をつける」ことです。記録をつけることで、後で振り返る時に、自分の進歩を確認できるようになるからです。入門期を過ぎ、進歩の度合いが緩やかになる時に、特に効果が出るようです。記録をつける方法は、以下のようなものがあります:
⑴ 短期目標の達成を日付で書いておくこと。
⑵ 学習計画を書き込んだカレンダーをファイルにしておくこと。
⑶ 学習日記をつけること。例えば、いつ、どんなリソースを使って、何をしたか、何を考えたかを記録してみること。
また、「仲間を見つける」こともあります。仲間は自分の言語学習の理由を理解し応援してくれるだけではなく、課題解決や、経験共有を通して、モチベーションの維持に働きかけます。言語学習の仲間を見つけるには、以下のような方法があります:
⑴ 外国語学習に特化したSNSを使うこと:例えば、Facebookの中の外国語学習の
グループや言語学習のアプリの中のコミュニティなどがあります。
⑵ 学校に行き、実際に他者とコミュニケーションをとること:大阪大学では、OUマルチリンガルプラザ主催の「会話パートナー」や「言語学習ポートフォーリオワークショップ」などの活動があり、また文学研究科が運営する「タンデム学習」のプロジェクトもあります。いずれも、仲間を見つけるのに役立ちます。
「外国語でコミュニケーションしたい!」と思っている方には特に「仲間を見つける」ことが重要だと思います。モチベーション維持の面だけではなく、話す練習をする面においても、誰かと会うことはより効果的だと思います。みなさんにはこのコラムで紹介した阪大の人的リソースを活用していただけたら幸いです。(陳静怡)
参考文献
青木直子(2013)『外国語学習アドバイジング』Kindle eBooks.