阪大でタンデム学習をやってみた
わたしは今学期から阪大でタンデム学習を始めました。タンデム学習とは母語が異なる2人がお互いの得意な言語について学び合うような学習形態です。自分の研究分野の文献を読んだり、発表を聞いたりする際に、タンデム学習に関するものを見たことがあり、次第に好奇心が生じました。その後、阪大でもタンデム学習のプロジェクトが行われていることを知り、自らの好奇心を満たすために、やりたいという気持ちが生じました。まとめると、「タンデム学習とは何か、そこから何が学べるか」を知ることが私の動機づけです。
このシリーズでは、3つのコラムに分けて書いています。コラム1はタンデム学習の紹介について書いています。コラム2は私が阪大でタンデム学習を行った経験を記述しており、コラム3では活動が終わった後の私の振返りをまとめています。実際にタンデム学習をやってみた私の目を通して、異なる言語や文化について学びたい皆さんの役に立てたら幸いです。
次のコラム1では、タンデム学習とは何か、タンデム学習はどのように進むのかについて、文献と私が受けたガイダンスに基づいて、まとめています。
【コラム1:タンデム学習の紹介】
1 タンデム学習とは何か
Wakisaka, et al.(2020)によると、タンデム学習とは異なる母語を話す二人の学習者がペアになり、互恵性と学習者オートノミーという2つの原則に基づき、互いに言語と文化を学び合う学習形態のことです。互恵性とは、誰かがイニシアチブを持つのではなく、双方が協力しお互い学び合うことで学習を成り立たせることを指し、また、学習者オートノミーとは、誰かのコントロールのもとで学習を進めているのではなく、あくまでも参加者双方が自らの学習をデザインし学習の管理を行っていくことだと言われています。タンデム学習自体についてはLittle and Brammerts や脇坂先生のサイトで詳細に紹介されているので、興味を持った方はそちらをご参照ください。
日本の大学でタンデム学習を組織し、運営しているところには例えば阪大や九州大学があり、阪大で2012年に導入され、九州大学でも2018年から導入されました。ここでの紹介の部分は主に九州大学のタンデムに携わっている脇坂先生が作成したサイト(http://www.isc.kyushuu.ac.jp/center/tandem/index.html)と阪大のタンデムのガイドラインを参考にしながら書いています。興味関心のある方はぜひリンクをクリックして見てください。
タンデム学習の利点について、上述した脇坂先生のサイトでは、第二言語能力を高める、学習者オートノミーを伸ばす、異文化コミュニケーション能力を向上させる、言語学習の動機を高める、のようにまとめています。また日本語学習に関連するタンデム学習の研究や報告では、友達意識が芽生えることや目標言語を話すことに対する自信がつくと述べられていました。
今回私が参加したのは大阪大学文学部・文学研究科のタンデム学習プロジェクトです。新型コロナウィルス感染拡大のため、今年はガイダンスを含め、全てがオンライン上で行うEタンデムになりました。阪大のタンデム学習プロジェクトは現在Facebook、Twitter、Instagramともアカウントを持っています。興味関心のある方は、是非フォローしてください。
Facebook:大阪大学タンデム学習プロジェクト @Osaka U Tandem
https://ja-jp.facebook.com/OsakaUTandem
Instagram: osaka_u_tandem:https://www.instagram.com/osaka_u_tandem/
Twittter: Osaka U Tandem @u_tandem https://twitter.com/u_tandem
2 タンデム学習はどのように進むのか
タンデム学習にはカリキュラムの枠組みや、教師による仲介がありません。それまでにお互い面識がなく母語も異なる2人がコミュニケーションを取り続け、学習を続けていくためにはどうすればいいかにについて疑問をもったまま、オンラインガイダンスに参加しました。
ガイダンスに参加することは、「私はなぜタンデム学習に参加し、なぜこの言語を学ぶのか」、「どこまで学びたく、どのように学ぶのか」について深く考える機会となりました。その理由は、ガイダンスに参加する際は、「ガンダンスシート」の記入が実際に活動する2人に要求されるからです。そのガイダンスシートには、⑴タンデム学習を通して伸ばしたいスキル、⑵使いたい学習教材(リソース)、⑶タンデム学習を行う頻度、⑷目標、⑸初回のセッションの予定、を書く欄がありました。オンラインガイダンスの日、プロジェクトのスタッフの説明を受けながら、私とタンデムパートナーは自分の目標、自分が望んでいる学習方法、使いたいリソースについて意見交換しました。
また、ガイダンスを通して、決められた時間をどのように効率的に利用するかを知りました。タンデムのスタッフは90分のセッションを組み立てる案を一つアドバイスしてくれました:最初の5~10分は振り返りの時間として設定しておく——その後お互いの得意な言語を30分ずつ教え合う——最後の5〜10分は今後の計画を一緒に立てる。
ガイダンスで自分のやりたいこと、やりたいことをタンデムで実行する手順を知り、その次の週に私は実際にタンデム学習をはじめました。タンデム学習を行った私の経験談はコラム2にまとめています。
参考文献
Wakisaka, M. Hayashi, T. Kitagawa, N. Wolanski, B. Harada, K. Zhenyan, C. (2020). The Significance of Tandem Learning in a Japanese University. JASAL Journal. 1(1), 104-128.
(陳静怡)